読書覚書『闇の自己啓発』第3部闇の思想 第5章反出生主義
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第3部 初めから
・いきづらさ、人間関係、愛について考える
・アンチソーシャルな「自己啓発」の可能性とは
5章
・反出生主義に対しての、実存の問題。論理ゲームと当事者意識の欠如。
・ベネターの反出生主義
→現存する生の否定ではなく、これから始まる生の否定。
→良き生とそれを蝕む悪しき苦痛と死の二項対立。
・注、サヴァレスキュ。道徳のエンハンスメント。
→薬物投与で道徳的になった人間は薬理学的に奴隷化された人間であり、道徳的な人間とはみなされない。(森岡正博)
→「時計じかけのオレンジ」
・反出生主義の実践として、人類を絶滅させるためにパイプカットをしてモテモテになる努力をする。
・エーデルの再生産的未来主義。子どもという表象を未来の象徴として利用する立場
・クィア理論
→性的マイノリティの思想や文化・歴史を研究対象とする分野で用いられる理論。
・ハンス・ヨナス
→未来世代への責任
・未来世代(子どもという表象)の政治利用。その対としてのクィア理論。
→戦争での徴兵、国の借金、など
・E.Mシオラン
・ジョルジュ・アガンベン『オプス・デイー任務の考古学』
・今の苦しみの原因が自分の自由意思や血統にとどまるものなのか、制度的要因や環境にも視野を広げて考えることはできるはず。
・ロングフル・ライフ訴訟(本来避け得たはずの不当な苦しみを伴う生が与えられた事態に関する責任を問う訴訟)
・母性編重批判
→育児の責任を母親に押し付けすぎている。制度を整えることで環境を変えること、若年層の意識を少しずつ変えていくということが必要か。男性だけの意識を変えればよいというわけではない。女性側の意識も変える必要がある。(最近Twitterにあった、男性が育休を取ることに女性すら否定的であった話など。育休を男性が取ることを嫌がる女性がいるということが驚きだった)
→読み返していて気づいたが、別に若年層に限らなくてもよいような......自分の中の、老人たちは変わらないという無意識の偏見に気づけてよかった。
・労働基準法を守るように、家事労働に賃金を払うとつぶれてしまうような家庭
→賃金を支払えないくらいの労働量を母親に押し付けているという家庭、という理解で大丈夫か。
・シオラン「一冊の本は延期された自殺だ」
→自分の周りでうつ病になった人も、うつ病の時期にはよく読書をしていたようだ。うつ病の時に本なんか読んで余計にうつにならないのか、と思いはしたが、自分自身、メンタルやんで引きこもっていた時期は、気団まとめとか修羅場まとめとか読み漁って1日を潰していた。読むジャンルを選べば、文字を読むということは、精神的によいものなのかどうか。
・地縁血縁職場以外の人間関係
→・・・。自分の居場所を増やすことの重要性を、この新型コロナウイルスの時代では、殊更に感じる。職場に行き、家では妻とふたりという状況が加速されている。それ以外の人間関係がない。全く悪いことではないのだが。友人とお酒を飲みに行くことも憚られるため、世界が狭くなったなと息が詰まる感じは偶にある。
・ゼノフェミニズム
→ゼノって接頭語「外からの」という意味なんだ......なぜ今まで調べなかったのか。ゼノギアス。
→形而上学的ホラー短編集を執筆しているらしい、読んでみたい。『人類に対する陰謀』
・ザッフェ、人間の自意識は進化の過程で生じた悲劇的なエラー。
・「生まれてこなければよかった」ではなく「現世辛い」なのかも。
・「生まれてこなければよかった」ということへの解決策
①意識のある主体を生産したということを反省しない、何も考えない。
→ある意味で正解か。そのようなことを考えるのを諦め、流れに身を任せる。
②「生まれてこなければよかった」ものを美という観点から見ると、「生まれてきてよかった」となるかもしれない。自分自身を作品とする。生き様の作品化。映画「ジョーカー」
→三島由紀夫、太宰治?人の人生を作品として消化することをやり過ぎてはダメだが。
→自分自身の人生を作品としてどう仕上げていくか。どう人の記憶に残っていくか。
作品としてとらえるなら、自分の人生に意味を見出だす面も出てきそうだが、それは苦しみへと繋がらないか。美しい人生って何だ。
③人間を機械的なものととらえる。痛みや苦しみを外部刺激としてデータ的に処理する。思想や感情は常に行動の原因でなくともよい。サドの影響。
自分の原理や原則を設定し、それに従って生きていく。
→自分の原理原則を外部からコチコチに否定されたり、行き違いが生じたりすると、それはそれで苦しくなるもの。身も蓋もないがバランス感覚は大事。諦めたくはないが、自分を周りに適合させていかなければ生きるのが辛い、生きていけないと諦めている自分は少し悲しい。周りと色々会わせながら、何を貫くか。
全体的な感想
「反出生主義」という少し絶望感のあるテーマを扱った章であるが、反出生主義に賛成というわけでもなく、反対というわけでもなく。
あくまでも、現代の社会で生きづらいと感じた時に、その苦しみから少しでも楽になれる視座を持とう、そのために、現代社会に反するような理論や考え方をも利用していこうというスタンスであるようだ。
「生んでしまった責任」「自分が育てたら怪物を再生産するだけになりそう」など、子孫を残すということに関する四者の発言に共感することも多かった。
人生がある程度確定してしまうことの恐怖と、子どもという様々な可能性を秘めた存在を自分という未熟な存在が育ててしまってもよいのだろうかという恐怖。
そのタイミングが来たら、覚悟を決めて色々やるけど、それまではグジグジしてしまう。